建設業許可とは?〜建設業経営と将来への展望〜 その3
どの許可業種を選択するべきなのだろう?
まずは自社が取得すべき許可業種を把握した上で、営業所ごとに置かなければならない「専任技術者」に該当する人材がいるかどうかを確認し、許可取得準備を行わなければなりません。
最近テレビCMや広告などでよく見かける、住宅リフォームを手掛ける会社を例に挙げて考えてみましょう。この会社が内装間仕切りを行うのに、木材、石膏ボード、壁紙などで加工しようとすれば「内装仕上工事」の許可が必要となります。同時に外壁の塗装を行おうとすれば「塗装工事」もということになりますし、台所や浴槽の配管をいじるとなれば「管工事」許可も必要になります。
しかし、これらの業種すべての許可を取得するというのは現実的ではありません。人材を集めてそれを維持するだけでも、コストがかかってしまう恐れがあるからです。
このような場合は、「うちの会社はどの業種を核にして手掛けようか」という視点で考えましょう。内装仕上工事にスポットをあてて自社施工とし、塗装工事や管工事は従と考え、下請に発注すれば、内装仕上工事の許可のみの取得で済むことになります。
一連の工事施工過程のどの部分を担当するかで必要な許可が違ってくる場合もあります。鉄骨を最初からくみ上げるのであれば必要な許可は「鋼構造物工事」ということになりますが、鉄骨を組み立てるだけであれば「とび・土工・コンクリート工事」で十分ということになります。
また、工事の内容が重複する許可業種もあります。例えば、コンクリートブロック積み工事を主で行っている会社であれば、「石工事」か「タイル・れんが・ブロック工事」のどちらかの許可があればよいことになります。この場合であれば、それ以外で主になる工事を考えることで、どちらを取得すべきか決めることができます。サイディング工事やタイル張り工事を手掛けることが多いのであれば、間違いなく「タイル・れんが・ブロック工事」の許可申請を出すべきでしょう。
このように見ていくと、自社の業務内容をきちんと見つめたうえで、許可業種を判断・選択していくことが重要になります。
建設業許可申請を考えるときにまずやるべきことは、御社の技術力・業務内容を考慮したうえで、どの業種にスポットを当てて、核とするかという作戦を立てることです。
それでは、複数業種の許可を得る場合、どれを合わせたらいいですか?
自社の経営が安定してくると、今取得している業種に関連する工事などがお客様から依頼されるようになってきますね。このタイミングが許可業種の追加検討の時期になってくると思われます。
法定金額未満の工事を行う場合を除いて、許可を取得して初めてその業種を手掛けることができます。どこまでを自社施工にして、どこからを下請に出すのか、そのあたりを考慮しながら取得しましょう。
また、総合建設業社である場合、法定金額以上の専門工事を受注するときは、それぞれの業種の許可が必要になりますね。注意が必要です。
それぞれの業種について関連する業種の例
- 土木工事業…とび・土工工事業、舗装工事業、水道施設工事業
- 建築工事業…とび・土工工事業、内装仕上工事業、大工工事業、屋根工事業
- 大工工事業…建具工事業、とび・土工工事業
- 左官工事業…タイル・れんが・ブロック工事業、防水工事業
- とび・土工工事業…舗装工事業
- 石工事業…土木工事業、とび・土工工事業
- 屋根工事業…板金工事業、防水工事業
- 電気工事業…管工事業、電気通信工事業
- 管工事業…土木工事業、水道施設工事業
- タイル・れんが・ブロック工事業…とび・土工工事業
- ガラス工事業…建具工事業
- 塗装工事業…防水工事業
- 熱絶縁工事業…管工事業、電気工事業
平成28年に新設された「解体工事業」の概略を教えてください
平成28年6月1日以降、とび・土工工事業で行っていた工作物解体工事を施工する場合は、解体工事業の許可が必要となっています。既存のとび・土工工事業許可業者については経過措置が設けられていますが、専任技術者等の要件を満たし、経過措置期間内に業種追加の許可を得なければなりませんね。
解体工事とは、「工作物の解体を行う工事」と定義づけられています。また注意点として、それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当するということ(例えば信号機のみを解体する工事は、電気工事業となります)、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ土木一式工事や建築一式工事に該当する、ということが書かれています(『建設業許可申請の手引』より)。
解体工事業の技術者要件は以下の通りとなっています(国土交通省ホームページより引用)。
特定建設業の営業所専任技術者(監理技術者)要件
- 1級土木施工管理技士※1
- 1級建築施工管理技士※1
- 技術士(建設部門又は総合技術監理部門(建設)) ※2
- 主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の解体工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
一般建設業の営業所専任技術者(主任技術者)要件
- 監理技術者の資格のいずれか
- 2級土木施工管理技士(土木) ※1
- 2級建築施工管理技士(建築又は躯体) ※1
- とび技能士(1級)
- とび技能士(2級)合格後、解体工事に関し3年以上の実務経験を有する者
- 登録技術試験(種目:解体工事) ※3
- 大卒(指定学科※4)3年以上、高卒(指定学科※4)5年以上、その他10年以上の実務経験
- 土木工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務の経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
- 建築工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務の経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
- とび・土工工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務の経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
※1 平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要。
※2 当面の間、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要。
※3 平成28年6月1日より登録試験の申請を開始し、登録後順次、官報公告。
※4 解体工事業の指定学科は、土木工学又は建築学に関する学科
※5 ※1及び※2に記載の登録解体工事講習は、平成28年6月1日より登録講習の申請を開始し、登録後順次、官報公告。
電気工事の施工を自社で行いたい
電気工事業は、「建設業法」以外に「電気工事業法」、「電気工事士法」など他の法令にも規定があり、建設業許可業種の中では特殊な業種となっています。
建設業許可において「電気工事」とは、「発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事」と定義づけられていて、例として「発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備装置、ネオン設置工事」が挙げられています(『建設業許可申請の手引』より)。
太陽光発電設備の設置工事は電気工事に該当しますが、屋根一体型の太陽光パネル設置工事は『屋根工事』に該当し、大規模な太陽光発電設備設置工事(いわゆるメガソーラーと呼ばれるもの)は『土木工事業』に該当することがあります。また、冷暖房設備工事は『管工事』になります。
ここでタイトルの「電気工事の施工を自社で行う」ことについてですが、これについては「電気工事業の業務の適正化に関する法律」に「電気工事業を営む者の登録制度」の規定があります。
- 電気工事業を営もうとする者には、営業所の所在地を管轄する都道府県知事(経済産業大臣)の登録を受けることが義務付けられています(法第3条第1項)。登録の有効期間は5年間。(同条第2項)
- 自家用電気工作物のみに関する電気工事業を営もうとする者には、営業所の所在地を管轄する都道府県知事(経済産業大臣)に、事業を開始した旨を通知することが義務付けられています。(法第17条の2)
- 建設業法による許可を受けて電気工事業を営もうとする者には、建設業許可との二重規制を排除するため、登録ではなく届出が義務付けられています。(法第34条第4項)
- また、同様に自家用電気工作物のみに関する電気工事業を営もうとする者には、通知が義務付けられています。(法第34条第3項)
これを表にまとめて電気工事業者を区別すると、次のようになります。
概要 |
根拠条文 |
法律上の名称 |
---|---|---|
一般用電気工作物、あるいは一般用電気工作物及び自家用工作物に関する電気工事業を営む者 | 法第3条第1項又は第3項 |
登録電気工事業者 |
自家用電気工作物のみに関する電気工事業を営む者 | 法第17条の2第1項 |
通知電気工事業者 |
建設業法による許可を受けて、一般用電気工作物、あるいは一般用電気工作物及び自家用工作物に関する電気工事業を営む者 | 法第34条第2項 |
みなし登録電気工事業者 |
建設業法による許可を受けて、自家用電気工作物のみに関する電気工事業を営む者 | 法第34条第3項 |
みなし通知電気工事業者 |
- 一般用電気工作物…電気事業者から600V以下の電圧で受電している場所にある電気工作物。概括的に言えば、一般住宅や小規模な店舗、事務所などの屋内配電設備及び比較的出力の小さい発電設備等。(電気事業法(昭和37年法律第170号)第38条第1項第1号ないし第3号)
- 自家用電気工作物・・・一般用電気工作物及び事業用電気工作物以外の電気工作物。概括的に言えば、工場やビルのように、電気事業者から600Vより高い電圧で受電している事業場等の電気工作物。(電気事業法第38条第4項)
つまり、建設業法第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者については、電気工事業の登録の必要はなく、電気工事業を開始した時に「電気工事業開始届出書」を提出することとされていますが、建設業許可で求められている有資格者の要件(専任技術者には必ずしも電気工事士の資格は求められていない)と電気工事業法の有資格者(主任電気工事士)の要件が異なることから、建設業許可を受けたからといって、電気工事業を行えるわけではなく、直接電気工事を行うためには、あくまでも電気工事業法の規定を充足(例えば主任電気工事士については要件を満たす者を選任しておく)しておかなければならないということになります。
電気工事士法及び電気工事業法ともに罰則規定が設けられています。例を挙げておきます。
○ 電気工事士法
電気工事士無資格であるにもかかわらず、資格が必要となる電気工事に従事した者は、「3ヶ月以下の懲役若しくは3万円以下の罰金」
○ 電気工事業法
・ 登録、登録後の更新を受けないで電気工事業を営んだ者は、「1年以下の懲役若しくは10万円以下の罰金」
・ 不正の手段により登録、登録後の更新を受けた者は、「1年以下の懲役若しくは10万円以下の罰金」
・ 電気工事士無資格であるにもかかわらず、資格が必要となる電気工事に従事させた者は、「3ヶ月以下の懲役若しくは3万円以下の罰金」
・ 電気工事業者でない者(登録等がされていない)に登録等が必要となる電気工事業を請け負わせた電気工事業者は、「3ヶ月以下の懲役若しくは3万円以下の罰金」
・ 主任電気工事士を選任しなかった者は、「3万円以下の罰金」
・ 備えることを義務付けられている器具を備えていなかった電気工事業者は、「3万円以下の罰金」